引き伸ばし処理

  • 一定の質品質を求めるのであれば、現像液の量や温度の管理は厳密にして下さい。停止液や定着液もフィルムとは分けたほうが望ましいです。
  • 引延ばし作業には暗室が必要です。(印画紙は低感度のため、簡易な暗室でも可能です。)
  • レンズの写りを判断するためには、六切り以上に伸ばすことをおすすめします。見慣れていれば別ですが、L版やカビネサイズだとピンボケや像が歪んでいても判読できないことが多いです。諧調の判断や大きくした時の像の破綻具合等の把握のためにも大きく伸ばすことお勧めします。
  • バライタでの引き伸ばしには、別途ドライマウントプレス機などがないと良好な結果を得難いです。機材がない場合でバライタ製作の必要がある場合は、プロラボに依頼する方が望ましいと思います。
  • 現像や引き伸ばしに使用するの薬品は酸性やアルカリ性の重金属を含んだ溶液です。付着や誤飲すると危険です。必要に応じて手袋やゴーグルを着用し、取り扱いには注意してして下さい。
目次

引き伸ばし処理の概要

  1. 準備(現像液・停止液・定着液・水洗促進剤の準備、バット、イーゼル、通電の確認等)
  2. フィルムのセット(ブロアーで清掃)
  3. 引き伸ばし作業(赤色灯下:5~10秒程度)
  4. 現像液(赤色灯下:1分)
  5. 停止液(赤色灯下:20秒)
  6. 定着液(30秒)
  7. 水洗(水洗→水洗促進剤→水洗)
  8. 乾燥
  9. スポティング

引き伸ばしの準備

暗室(フィルムの現像で必要とされる完全な暗室でなく、簡易でもできます。)
引き伸ばし機
引伸レンズ(135:50mm、120:75mm)
引き伸ばし機のネガキャリア(伸ばすフィルムのサイズごとに必要)
ピントルーペ(フォーカススコープ)
多諧調フィルター(多諧調紙を使用する場合に必要。ない状態で多諧調紙を露光すると印画紙は2号相当になります)
印画紙(六切がおすすめ)
バット(現像、停止、定着の3つは必要、水洗促進剤、水洗用もあれば楽です)
ピンセット(現像、停止、定着の3本は必要)
現像液、停止液、定着液、(水洗促進剤)
※引き伸ばしのタイマー(または暗室時計など)
※引き伸ばしタイマーのフットスイッチ(覆い焼きや焼き込みをするならばあると便利)
※イーゼル(印画紙を押さえつけるためと印画紙の露光範囲を一定にするために必要)
※引伸露光計
※印画紙の洗浄機(大量に処理する場合はあると楽)
※印画紙の乾燥機 (大量に処理する場合はあると楽)

※は無くても大丈夫と思いますが、あると便利です。

引き伸ばし準備1

 横に並べるスペースが無ければ、ラックなどで縦にバットを配置する方法でもいいと思います。

 現像用、停止用、定着用、(水洗促進剤用)、水洗用のバット及びピンセットを準備します。

 印画紙が当たったり、取りにくいので、バットは伸ばすサイズの1つ上のサイズくらいが望ましいです。

名称mmインチ
L判89×1273.5×5
カビネ120×1654.75×6.5
2L判(大カビネ)127×1785×7
六切203×2548×10
ワイド六切203×3058×12
四切254×30510×12
ワイド四切254×35610×14

現像液

 記載のとおり1+9に希釈します。フィルムの現像液とは異なるので注意して下さい。バットに放置した状態だと1日程度しか持ちません。
 以前は印画紙と同様に印画紙の現像液にも冷黒調、中間、温黒調と種類がありましたが、現在は冷黒調はないので、必要があれば自分で調合する必要があります。

停止液

 記載のとおり 5mmLで1Lになるように希釈して使用しています。原則破棄して、使用時に作成しています。

定着液

 非硬膜の定着液を使用しています。液体タイプだと停止液と同様に希釈するだけで使用できます。1+4と記載があるので、100mmLを水400mmLで希釈して使用しています。 本来フィルムとは分けた方がいいのですが、私は使いまわしをしています。使用後はポリエビンに保管しています。

水洗促進剤

 RCだと使用しなくても大丈夫のようですが、写真が変色したことがあるので使用しています。上記の停止液、定着液と同じシリーズのウォッシュエイドを使用することが多いです。
 バライタだと水洗では効果が出難いので必須です。バライタの場合は処理時間10分と記載があるのでそれに従います。RCであればそこまでの処理時間は不要と思うので短くしています。

引き伸ばし機の準備

引き伸ばし機の準備1

 使用する引き伸ばし用レンズとネガキャリアを用意します。各フィルムに対して135:50mm、120:75mmのレンズを使用します。
 引き伸ばし機の付属レンズをそまま使用していることはあまりなさそうですが、LPLの120用のレンズは割といいと聞きます。実際使用してみても思いの外良好な結果でした。フジやニコンを使用している人が多いです。
 本来は、撮影したレンズのメーカーと同じメーカーのものを使用するといいと言われています(号数印画紙のバライタであれば違いが顕著にでますが、多諧調紙RCだとそこまで差はでないようです)。
 高価ですが、仕上がりが素晴らしいと言われているのは、ライカのフォコター(通常はライカの引伸機のフォコマートで使用します)やローデンシュトックのロタゴンなどです。
 ネガキャリアはフィルムのサイズに応じたサイズが必要です。どうしてもない場合はガラス板2枚で挟むことで代用可能ですが、隙間やガラス板から光線漏れをする恐れがあります。

引き伸ばし機のレンズの取り付け

 ライカのLマウントと同じです。(メーカーによっては専用のレンズしか付かない引き伸ばし機もあります。)
 引き伸ばすネガに従い、準備したレンズを装着します。引き伸ばし用のレンズは光源に近いため、多少曇っていても使えることが多いです。
 撮影用レンズが使えないことはないのですが、光源に近い、湿度が高いなどの理由により曇り易くなるためおすすめでしません。
 保管について、レンズは出来れば装着したままの方が望ましいですが、使用頻度が低い場合はカビが発生することがありますので、取り外して別に保管した方がいいです。

引き伸ばし作業

ネガ及びネガキャリアのセット

ネガのセット
ネガキャリアを本体にセット

 フィルムの埃はブロワー等で除いておきます。ネガのコマをネガキャリアの透過穴に合わせます。フィルムを挟んだらセットしたネガキャリアを本体にはめ込みます。
※ 6×6や6×7のキャリアが無い時はガラス板に挟んで入れていました。ガラス板で代用する場合は用意するガラス板の厚さに注意して下さい。

イーゼルの設置

イーゼルのセット

 イーゼルをセットします。人によってはイーゼルの厚さが邪魔などの理由により使わない人もいます。
 必要があると思えば使用すればいいと思います。曲尺を2本使用したり、L字に切った厚紙で抑える方法もあります。 
 取り敢えず必要かと思い買ったので使用していますが、正直不要な気がしています。購入すると高いのでよく考えた方がいいと思います。
 イーゼルのセットについてはtokyo-photo.netさんのイーゼルのセットアップを参考にするといいと思います。

 ネガ、イーゼルもセットしたらここから下は赤色灯下での作業が必須になります。

印刷範囲及びピントあわせ

引き伸ばし機のピント合わせ
赤色灯下でのピントあわせ

 引き伸ばしレンズは絞りを開放にしておきます。
 赤色灯下で左のクランクを回して 引伸機 のヘッドを上下させて、引き伸ばす範囲を決めます。

 

引き伸ばし機のピント合わせ2
引き伸ばし機のピント合わせ

 引き伸ばす範囲が確定したら、フォーカススコープを使用して左のピントノブを回してピントを合わせます。フォーカススコープは無いと合わせるのが難しいです。
 ピントが合ったら 引伸機のレンズを絞ります。通常は撮影レンズと同様に2~3段絞りますが、露光時間に併せて調整します。

 ピントルーペ(フォーカススコープ)はLPLやキングの安価なもからピークの高価なものまで、色々な種類が販売されていました。
 どうせ買うならピークをお勧めします。ピークは1、2、3型の3種類がありますが、1か2型がいいようです。

  https://www.freestylephoto.biz/https://www.bhphotovideo.com/ ならば、Paterson Micro Focus FinderやLegacy Pro 10x Grain Focuserの新品が手に入ります。

焼き付け作業

 引き伸ばしタイマーがあれば時間を設定して、なければ暗室タイマー(暗所でもみえる時計)等を使用して(手動で点灯、消灯を行う)試し焼きを行い、露光時間を決定します。
 このホームページに掲載する時はスプリットグレードプリント法で焼いていることが多いです。
 ※ 上達したいのならば、2ないし3号印画紙に固定して練習した方がいいと思います。数字が小さい方が軟調で大きい方が硬調です。多諧調紙でフィルターなしだと通常は2号に相当します。

試し焼き

アナログプリント試し焼き
引伸露光計
アナログプリント試し焼き(濃度確認)
ステップウェッジ
試し焼き(露光時間指標)
Delta 1 Projection Print Calculator Scale

 試し焼きを行い、露光時間を決定します。露光計(露出計のようなタイプもあります。)を持ってるならば使用します。
 回転させるタイプを持っていいますが、正直使わないです。印画紙の上に本などを載せて、時間でずらしながら試し焼きをした方が早いと思います。delta1のようなものがあれば印画紙に載せて焼けば露光時間算出の目安になります。
 濃度を比較したいとならステップウェッジがあれば便利です。

 

 ステップウェッジはhttps://www.pgi.ac/(写真材料)やhttps://www.bhphotovideo.com/で取り扱いがあります。

 

 露光時間はランプのワット数や引伸機の種類、引き伸ばしレンズの絞り、ネガの状態で決まりますが、一般的には5~10秒程度になるように設定します。特に覆い焼きや焼き込みをする場合は、ある程度露光時間が必要です。コンテスト用や作品展用は、初見の印象を強くするために硬調気味に焼くことが多いです。(その他露光について

焼きこみ、覆い焼き

  • 他の部分より黒くしたい場合は、露光時にそこだけに光が当たるように周辺を何かで覆ってやって、該当箇所を焼きこみます。
  • 他の部分より明るくしたい箇所がある場合は、露光時にそこを何かで覆ってやればそこだけ明るくなります。

 手を使って両手で隙間を作ってそこだけ光を通すようにしたり、翳して遮ったりします。範囲が広い場合や細かい作業を行いたい時は、紙などを切ったり、それに針金を付けたりして専用の道具を作成して行うことがあります。斑にならないように手首の位置などを変更しながら焼きます。また、境界が目立たないようにするために、覆う箇所も固定はせずにある程度動かしながら焼きます。
 以前は専用の赤色のセロハンが売られていて、焼きこみたいところを切り取って使うようなものがあったのですが、今は見当たらないです。赤色セロハンで代用できるかは不明です。覆い焼きや焼き込みなどやり過ぎると不自然な作品に仕上がるので、やり過ぎには注意して下さい。

スプリットグレードプリント法

引き伸ばし機の軟調、硬調設定
  • 軟調から秒数を決定するので、イエローフィルターを最大値にして、試し焼きを行い露光時間を決定します。ーa秒
  • 次に硬調の秒数を決定するので、イエローフィルターを0にして、マゼンダフィルターを最大値にします。この状態で試し焼きを行い秒数を決定します。ーb秒
  • 先ずイエローフィルターを最大にしてa秒露光し、次にイエローフィルターを0にしてマゼンダフィルター最大にしてb-a×(15~20%)=c秒露光します。15~20%間で好みの数値を探る必要があります。

 

現像液→停止液→定着液→水洗(水洗促進剤)→乾燥→スポティング

引き伸ばし準備で用意したバットに入った各種溶液に入れていきます。RCだと下記のとおりです。

  • 現像液は1分
  • 停止液は20秒
  • 定着液は30秒
  • 水洗
  • 水洗促進剤
  • 水洗
  • 乾燥
  • スポティング

水洗

 大量に引き伸ばす場合やバライタの場合は水洗機を使用したほうが楽だと思います。現在はパターソン 自動プリント洗浄機24x30cmか30x40cmしか選択肢がなさそうです。(http://www.silversalt.jp/)で取り扱いがあるようです。割と音が煩いようなので、騒音が気になる人は使用できないと思います。 RCペーパー用ハイスピードプリントウォッシャーは1枚のようなので、必要であれば上記のタイプの方がいいと思います。

乾燥

 ネガのように吊るす、突っ張り棒に網戸の網を張る、プリントラックを使用するなどの方法で乾燥させます。私は突っ張り棒を2本使用して間に網戸の網を張って、そこに置いて乾燥させています。

スポティング

 傷や斑がある個所はスポッティング溶液を希釈等して濃度を調整し、その個所を修正・補正することで分かり難くしますが、専用液がすでに販売されていないので、墨汁等の似たもので代替するしかない状況です。

  1. 黒色を薄めて埋めたい箇所に近い色を作ります。印画紙の余白部分に塗ってみて確かめます。
  2. 筆を立てて、点描します。小さな黒点で根気強く埋めます。一気に塗ろうとすると往々にして失敗します。スポッティング剤は乾くと濃くなることが多いので淡めにした方がいいです。下手すると1時間かかったりします。

 https://www.freestylephoto.biz/https://www.bhphotovideo.com/ならまだ取り扱いがあるようです。1度買っておけば使い切ることは無さそうに思います。

その他

 鶏卵紙(アルビューメンプリント)、P.O.P、塩化銀紙(ソルテッドプリント)、プラチナプリント、クラシック技法(カーブロ印画法、オゾブロム法、ゴム印画法、オイルプリント法、ブロムオイル法)などの方法があります。
 保存性などでは優れている面もありますが、密着焼きしかできなかったり(通常はネガと同じサイズになる)、専用機材や手間がかかるためおすすめしません。

消耗品等

ポリバット、竹ピンセット

ポリバットは引き伸ばすサイズの1サイズ上が使い易いと思います。ピンセットは竹製が買い易いですが、金属製の方が掴みやすく、耐久性があります。なお、バットは料理用などでも代用できます。

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多諧調紙用フィルター

引き伸ばし機に多諧調やカラー引き伸ばし用のフィルターが付いていない場合は、多諧調紙で号数を調整するのに別途必要です。

イーゼル、曲尺

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タジマ
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引伸機

LPL
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LPL
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参考

印画紙乾燥、コンセントタイマー、スポティング

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パナソニック
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印画紙

  • 通常は印画紙のメーカーの現像液を使用します。
  • 難しいとは思いますが、バライタ紙の号数印画紙を使用した方が引き伸ばしレンズの違いが大きくでます。RC多諧調紙だと引き伸ばしレンズによる差はそこまででません。(要はRCや多諧調紙を使用すると平均化されてしまうので、差異が必要ならバライタ号数印画紙を使用して、引き伸ばしレンズを吟味した方がいいです。)

ILFORD PHOTO

RC印画紙
マルチグレード RCデラックス(マルチグレードⅣ RCデラックスの後継品)

1M:光沢 25M:微光沢 44M:半光沢 

マルチグレードⅣ RCポートフォリオ

1K:光沢 44K:半光沢

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イルフォスピードRCデラックス

1K:光沢 44K:半光沢
号数が2号か3号の2種類の印画紙

ORIENTAL

F:光沢、R:半光沢

Kentmere

1M:光沢、66M:微粒子

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バライタ紙

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